1999年7月31日。人類滅亡……の予定? けれど実際には何も起こらず、平和に一日は終わろうとしている。TVではノストラダムスの予言を検証する番組が流れ、澤樹 告(主人公・プレイヤー)はそれを食傷気味に眺めてみたり。 一浪までしてやっと念願の美大に入学した澤樹にとっては人類滅亡なんてどうでもいい事で、むしろ気になるのは夏休みの過ごし方であったり、これからの学生生活だったりするものだ。退屈なTV番組を横目で眺めつつ、澤樹はは壁に張ったカレンダーに目をむける。 明日、8月1日は午前中から新しいアルバイトの面接が入っているのだ。こんな日は早く寝てしまうに限る、と思いつつカレンダーからその横に掛けてあるアンティークのダーツに視線を移した。前に骨董市で見つけたそのダーツに矢を放つのが、澤樹の癖というか暇つぶしというか、まぁ習慣のようなものになってしまっている。 TVでは怪しげな風貌の老婆が「魔王は必ず降臨する」という予言の成就を力説しており、番組ではその瞬間に向けてのカウントダウンが始まっている。そして澤樹がダーツの最後の矢を投げるその瞬間……TVの中の老婆は絶叫し、澤樹の部屋は強烈な白い光に包まれる! 眩しさに耐え切れずに思わず目をつぶる澤樹。気がつけば、部屋は普段と何も変わらず、TVの中の老婆が倒れていてスタジオは騒然としている。気のせいだったのか、それとも老婆の絶叫に驚いただけだったのかも知れないが。澤樹は気を取り直して、TVのリモコンに手を伸ばした。見飽きた世紀末議論よりも、こういった生放送のハプニングの方が余程面白味があるというものだ。鼻で笑いながら澤樹はベッドに横になる。 その時澤樹は、壁のダーツの盤が怪しげな光を発している事には まだ気がついていなかった……。 その晩のこと。一人ベッドでうなされる澤樹。こめかみを刺すような頭痛と背中を切り刻まれるような筋肉痛が襲い来る。あまりの激痛に目を覚ました澤樹は、よろよろとバスルームに行き、そこで鏡に写 った自らの姿を見て愕然とした。 こめかみからは、羊のようにねじ曲がった角が鮮血を滴らせながら音を立てて生えてくる。また背中からは、寝間着代わりのTシャツを引き裂いて白鳥のような純白の翼が生えてきているではないか。赤い血飛沫と白い羽が幻想的に舞い散る中で澤樹は思わず声にならない悲鳴を上げる。 そこで目が覚めた。そこは見慣れたベッドの上。日付こそ変わっているものの、どうやらまだ夜明け前らしく窓の外は暗い。嫌な夢だが夢で良かった、と安堵のため息を漏らした澤樹は、しかし額の汗を拭った手にこびりついた血糊とベッド中に散乱した白い羽毛を見て愕然とする。同時に頭の中に響く声。 『夢じゃないってば』