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『率土ノ浜、並ベテ家無キ者ノ住ムニ能ハズ』
イズマエル=ニエヴェス3世。

ある日突然発せられた布告。この国に生きる大勢の、慎ましく真面目に日々を過ごす
常民にとっては取るに足りない布告。しかし、これにより僅かではあるが己が生を
脅かされる者達がいたことも事実である。

その日の上がりはいつもより少なかった。
「まあ、最初の内はこんなもんさ」慰めるようにお爺は言った。
「段取りも、運びも良かった。後は客の顔色を窺って上手く出し物の順番を入れ替えたり、
口上にアドリブを入れられるようになれば一人前だ。ゆっくり慣れるとよい。
さて、わしは寝るとしよう」
お爺がゆっくりと腰を上げる。
「イザベラおいで、今夜はお前だ」
「お休み、お爺」
「ああ、お休み」
ゆっくりと左手を上げながらお爺は部屋から出て行った。お爺の後をイザベラが、
閉りかけるドアを滑るようにすり抜ける。部屋に一人取り残されると、
初めて公演を仕切った緊張が急速に眠気へと変化して行く。
やがて隣室から聞こえて来る聞き憶えのある嬌声を耳にしつつ、ぼくは眠りに落ちた。